歴史
起源
Dalec は Microsoft の Azure Upstream チームが始めたプロジェクトで、GitHub リポジトリの作成は 2023-06-08 である (GitHub API の created_at)。発端となった課題は社内的なものだった。Azure は、コンプライアンス要件を満たす形でソフトウェアパッケージをビルドする必要があった。すなわち、署名済みパッケージ・SBOM・provenance を伴う再現可能なビルドである。ネイティブな RPM/DEB パッケージをそのように作るには、通常は distro 固有のツール、ビルドホスト、手書きのスクリプトが要る。Dalec はそれを 1 枚の宣言的 spec にまとめ、Docker BuildKit 上で回すために作られた。結果として、ビルドには docker build 以外のツールが不要になる (Microsoft Community Hub ブログ、cncf/sandbox #396)。
Microsoft は Dalec を製品として提供していない。Sandbox 提案は、AKS が upstream Kubernetes に対して持つ関係と同じ位置づけで説明している。Microsoft は Dalec を自社のコンプライアンスビルドに downstream で使い、オープンに開発する。販売はしない (cncf/sandbox #396)。
年表
| 年 | マイルストーン |
|---|---|
| 2023 | Azure Upstream チームが GitHub リポジトリを作成 (2023-06-08) |
| 2025 | CNCF Sandbox 提案を起票 (cncf/sandbox #396、2025-07-18)、Sandbox として採択 (2025-10-08)、リポジトリを Azure/dalec から project-dalec 組織へ移管 |
| 2026 | v0.21.x リリースラインが活発。本ドキュメントは 0d888c2 (タグ v0.21.2 の近傍) を基準 |
どう進化したか
明確な転換点は 2 つ、ガバナンスと名称であり、両者は同時に起きた。2025-07-18、Riya Choudary が Azure Upstream チームを代表して CNCF Sandbox 提案を起票した。スポンサー連絡先は Microsoft の Brendan Burns で、Jeremy Rickard (TOC メンバー)、Lachie Evenson (Governing Board メンバー)、Bridget Kromhout ら CNCF の関係者が支持した (cncf/sandbox #396)。提案は投票を通過し (issue に gitvote/passed ラベル)、2025-10-08 に Sandbox レベルで採択された (CNCF プロジェクトページ)。
その採択の前後で、プロジェクトは Microsoft の名前空間から離れた。リポジトリは Azure/dalec から project-dalec/dalec へ移った。GitHub は旧パスから 301 リダイレクトを返し、Go module は github.com/project-dalec/dalec になり、著作権表記は「Dalec a Series of LF Projects, LLC」と読める (README)。コードは同じで、住所がベンダー中立な CNCF 組織へ変わった。Microsoft はその後も KubeCon NA 2025 と EU 2026 で Dalec を CNCF プロジェクトとして紹介している (Microsoft オープンソースブログ)。
現在地
Dalec は活発な CNCF Sandbox プロジェクトで、リリースは着実なペースにある。基準コミット時点 (2026-06-26) では v0.21.x ラインが現行だ。ガバナンスは GOVERNANCE.md (「Dalec Project Governance」) に定義され、メンテナ、メンテナになる手続き、ミーティング、セキュリティレスポンスチーム、投票を扱う。コントリビューションには署名付き DCO が必須で、CNCF の dco-2 GitHub App が PR ごとに強制する (README)。メンテナは依然として全員 Microsoft である (MAINTAINERS.md によれば Brian Goff、Jeremy Rickard、Peter Engelbert、emeritus に Sertac Ozercan)。中立な組織への移管は、まだコントリビュータ層の広がりには結びついていない。採用事例のページで再び触れる点だ。