歴史
起源
wasmCloud は Liam Randall と Kevin Hoffman が米大手銀行に在籍していた頃に着手した。彼らはビジネスロジックを、単一ランタイムに縛られたモノリスではなく、プラットフォームが配置・結線できる小さく可搬な単位として動かしたかった。初期の抽象は actor model (1973 年に起源を持つ) に基づく。実装は一時 Rust から Erlang/OTP に移り、WebAssembly コンポーネントモデルによって Rust ベースのコンポーネントランタイムが現実的になると再び Rust に戻った (b-nova、InfoWorld)。
スポンサー企業は Cosmonic で、Liam Randall と Stuart Harris が共同創業した。現在のプロジェクトリードは Cosmonic CTO 兼 Bytecode Alliance TSC メンバーの Bailey Hayes (CNCF incubator blog)。
年表
| 年 | マイルストーン |
|---|---|
| 2021 | 2021-07-13 に CNCF Sandbox 受理 (CNCF project page) |
| 2023 | WASI Preview 2 / コンポーネントモデルに合わせてエコシステムを componentize。IDL に WIT を採用 (Cosmonic) |
| 2024 | KubeCon EU Paris で wasmCloud 1.0。WASI 0.2 と wRPC を本番向けに (Cosmonic) |
| 2024 | Kubernetes operator (旧 Cosmonic Connect Kubernetes) を CNCF へ寄贈 (Cosmonic) |
| 2024 | 2024-11-08 の TOC 投票で Sandbox から Incubating へ昇格 (CNCF) |
| 2026 | v2.4.0 を 2026-06-17 にリリース (GitHub Releases) |
どう進化したか
最大の転換は、基準コミットに反映された v2 リライトだ。歴史的な wasmCloud は、NATS の「lattice」が actor (後にコンポーネント)・capability provider・宣言的デプロイ管理の wadm を繋ぐ多クレート構成だった (wasmCloud docs)。基準コミットの wasmCloud/wasmCloud リポジトリは中身が大きく異なる。wash (README.md:1) を中心に据え、Cargo workspace のメンバーは 3 つ: wash CLI、wash-runtime ランタイム、ベンチマーク用クレート。
これは Q3 2025 ロードマップに沿う。ロードマップは provider を wRPC server として位置づけ直し、transport・scheduling・events・claims を刷新しつつ Kubernetes に寄せることを掲げた (roadmap)。v2 コードでは NATS lattice はもはやコントロールプレーンではない。制御は gRPC 経由で Kubernetes operator に流れる (proto/wasmcloud/runtime/v2/)。NATS は一部のプラグイン (key-value と blob store) の内部で使われる依存として残るが、必須のコントロールプレーン要素ではない。
読者にとっての帰結は 2 つ。lattice・NATS・actor・wadm を説明する古い記事は概念モデルの理解には今も有効だが、現行コードの構造とは一致しない。本ディープダイブのアーキテクチャと内部実装は、0c6315b 時点の v2 コードを記述する。
現在地
プロジェクトは CNCF Incubating。リリースは v2.x 系で継続し、v2.4.0 は 2026-06-17 付。開発は wash CLI と組み込みの wash-runtime を中心とし、Go の operator と gateway が Kubernetes 統合を提供する。掲げる方向性は、ローカル開発 (wash dev) と Kubernetes 本番 (operator + gRPC) で共有する単一コンポーネントランタイムであり、ロードマップに記され v2 workspace で実現されている (roadmap)。